保育園栄養士として働く日々は、多くの人には見えない厳しい側面も含んでいます。子供達の健康や栄養を守るために日々奮闘する姿は「やりがい」を感じる一方で、心身ともに大きな負担も抱える事があります。
今回はそんな保育園栄養士のリアルな日常に迫ってみようと思います。
保育園栄養士には、大きく分けて2つの業務があります。
献立作成や発注、報告書の作成などの事務的な業務と、給食やおやつなどを作る厨房業務があり、それぞれの業務の大変さについてお話ししていこうと思います。
施設環境により大きく変わってくるので、全ての園で同じような仕事内容ではありません。
少しでも参考になればと思います。
事務的業務の大変さとは?
事務作業での大変さについてお話ししていきます。
保育園によって、厨房業務は全くせずに事務的な作業のみの栄養士の方もいます。
主な仕事内容としては、
・献立作成や栄養計算
・発注
・衛生管理記録の記入
・連絡調整
などが挙げられます。
それぞれについて詳しくみていきます。
献立作成や栄養計算
献立作成は保育園栄養士の仕事内容として欠かせないものですね。献立作成時に気をつけている事は以下のような事です。
季節や地域の特性、子供達の好みやアレルギーを考慮して、1週間単位や1日単位での献立を作成します。
僕の園では1日単位で献立を作成していて、毎日違う給食やおやつを提供しています。
同じ様なメニューが続かないように新しいメニューを考えたり、カロリーなど栄養価を考えながら作成していかなければいけないので大変です。
1週間や2週間サイクルで献立を作成している園もあります。
メリットとしては、発注業務など時間短縮できるので他の作業に時間を割く事ができます。
デメリットは同じメニューが月に2回は入ってくるので献立のマンネリ化に繋がります。
また、主菜、副菜、汁物などの組み合わせや出来上がりの見た目も大事にしなければいけません。
例えば、ひじきご飯、焼き魚、切り干し大根の煮物、味噌汁だと、見た目が暗くなり、子供達があまり食べてくれない場合があります。
彩りを考えた組み合わせなど、出来上がりをイメージして献立を作成する事もとても大切になってきます。
そのためには、ある程度の調理スキルも必要になってきますし、料理をあまりやった事がない方や苦手な方は献立を作成するのに苦労すると思います。
栄養価だけにとらわれず、子供達が食べやすい物、出来上がり、調理工程なども考えながら献立を作成していく事が大切ですね。
栄養価もバッチリな給食を作っても食べてくれなければ何も意味がありません。
大前提は、子供達が美味しく食べてくれる物を作る事が大事になってきますね。
栄養価計算については、今は便利な献立ソフトを導入している園も多いので自動で計算をしてくれますが、献立ソフトを導入していない園は全て自分で計算しないといけないのでとても大変です。
また、園児の身長、体重から必要な栄養価を計算し、保育園で提供する給食やおやつの目標量を決めるのですが、園児数が多い場合、その入力にかなり時間がかかってしまいます。
厨房作業と兼用で行っている栄養士さんは大変だと思います。
複数の栄養士がいる場合は作業を分担できるのですが、1人で行っている場合はとてもきついと思います。
発注
発注も非常に重要な仕事で、発注をミスしてしまうと、給食が提供できない場合もあるので慎重に行わなければいけません。
献立ソフトで発注も行う事ができるのですが、僕の園では必ず手書きで発注を行っています。
事前に仕込みをしたり、在庫がある食品など、献立ソフトに任せると不安な事もたくさんあるので、手書きで確認しながら行っています。
2週間のサイクルメニューの場合は、2週間分の発注書を作成すれば1ヶ月分の発注が終わるのでメリットもあるのですが、先程も述べた通り、マンネリ化に繋がりやすいので気をつけなければいけません。
複数の業者と取引している場合、業者ごとに発注のやり方が違ったり、発注期限が短かったりするので注意しなければいけません。
パンなど、発注締め切りが短い場合もあるのでうっかりミスが命取りになることもあります。
過剰在庫や食品ロスを無くすために様々な事を考えながら発注作業を行わなければいけないのでかなりの神経を使いますし、大変な仕事の1つだと思います。
衛生管理記録の記入
衛生管理なども大切な仕事です。
保育園のような大量調理施設には厚生労働省が作成した「大量調理施設衛生管理マニュアル」に記載された内容をもとに、点検・記録を行わなければいけません。
この業務を怠ると、最悪の場合給食提供ができなくなってしまう可能性もあります。
しっかりと点検・記録を行わなければいけないのですが、設備環境や人員不足など様々な理由でなかなかマニュアル通りに行えない事が多いです。
しかし、マニュアル通りに行っていないと、行政指導が入ったり注意を受けるので大変だと感じている栄養士の方も多いと思います。
衛生記録の記入は基本的に毎日行わなければいけませんが、なかなか時間がなく後回しになりどんどんと書類が溜まってしまうという園も少なくありません。
きちんと点検・記録するべきものは毎日行える様な環境を作るのも保育園栄養士の大切な仕事の1つだと思っています。
その他にも特定給食施設栄養管理報告書など、保健所に提出しなければいけない書類の作成などもあり、様々な仕事をこなしながら提出しなければいけない書類の作成など、時間に追われる時期も少なくありません。
連絡調整
保育士や保護者との連絡調整も重要な仕事の1つです。
特に食事に関する情報の共有や、アレルギー対応など、正確な情報伝達が重要です。
アレルギー対応についても、園により様々で、これが正解!というものはないと思っています。
重大な事故が起こらない対応マニュアルを作成し、浸透させる必要がありますね。
他にも会議やイベント、業者との打ち合わせなど、スケジュールの調整も大変です。
複数の予定を把握し、適切なタイミングで連絡を行う必要があります。
僕の園では、赤ちゃん教室など、地域の方々を対象に離乳食の作り方やアドバイスなどを行っており、そういったイベントの資料作成なども大切な仕事の1つです。
保育園での連絡調整は、保育園栄養士にとって日常的な業務の一部であり、円滑な業務遂行やコミュニケーションを図る上で欠かせない重要な仕事ですね。
厨房業務の大変さとは?
厨房業務の大変さも園の規模や設備環境によって大きく変わってきますが、主な内容としては以下の点が挙げられます。
・体力的な負担
・時間的な制約
・高温多湿な環境
・衛生管理
などが挙げられます。
体力的な負担
厨房業務では、長時間立ち続けることや重い物を運ぶ事があるため体力的な負担が大きいです。
立ったまま仕事をすることがほとんどですし、洗い物など前かがみになる事も多く、腰などにも負担がかかり痛めてしまう方が多いです。
陶器の食器を使用している保育園では、大量の食器を運ぶ際、体に負担がかかる事があります。
食材を炒めたりする場合も大きな回転釜を使います。
全てが大きいのでとても大変な作業ですよ。
「こんなに大変だとは思わなかった」や「腰を痛めてしまい仕事ができない」と言って辞めていく方もたくさん見てきました。
保育園だからそこまできつくないという軽い気持ちで働くと痛い目にあうと思いますよ。
時間的な規制
これは保育園に限ったことではないですが、食事提供の時間が決まっているのでそれまでに作業を終わらせなければいけません。
メニューによってとても忙しい日もありますし、イベントの日などは作業工程がとても多く、かなりタイトなスケジュールで動かなければいけません。
常に時間を気にして行動しなければいけないです。
作業スピードは個々により様々で、周りのスピードについていけず、自分だけ取り残されたような感覚になって辞めていってしまうという方も中にはいます。
チームワークがとても大事な職場で、周りの状況をみて臨機応変に行動する事がとても大切になってきます。
時間を気にせず、自分だけ時間をかけて作業しているというような方は厨房業務は大変になってくると思いますよ。
高温多湿な環境
個人的には、この高温多湿な環境が一番きついと思っています。
厨房は、高温多湿な環境であり、調理作業を行うと、ガスを使用したり蒸気などの影響によりかなり暑くなります。
夏場は特にひどく、空調設備が整っていない園などは室温が40℃近くなったりと、かなり大変な場所となります。
汗をかいて服を着替えたりも調理中はできないので本当に夏場の調理は大変です。
洗い物中も、食洗機の蒸気などでとても蒸し暑く、食器をつけているお湯も熱いのでかなりの体力を奪われます。
高温多湿な環境は自分一人ではどうしようもできないので、厨房業務での大変な作業の1つに挙げられますね。
僕の園では水分補給をしっかりと行い、熱中症にならないように配慮をしています。
衛生管理
食品の衛生管理は非常に重要であり、衛生基準を守りながら作業を行う必要があります。
家庭で行っている作業とは異なる事も多く、初めての方は特に戸惑ってしまうと思います。
食材の搬入から調理に至るまでも、品質を保つための適切な管理が求められますし、特に生鮮食品や冷凍食品の管理は特に注意が必要です。
調理中も、衛生管理が重要で食中毒や細菌の繁殖を防ぐため、適切な手洗いや調理器具の清潔さを保つ必要があります。
出来上がった食事も温度管理を徹底するなどマニュアルに沿った対応もしなければいけませんし、子供たちの健康を守るためには細心の注意が必要となってきます。
子供達はもちろん、保護者の方や保育士の方々に対して、食事や衛生に関する正しい知識を提供する事も重要で、健康的な食習慣を身につけるための指導や啓発活動も求められます。
これらの衛生管理の取り組みは、保育園栄養士にとって日常的な責任であり、食品安全や健康管理に直結するため、非常に大変な作業と言えます。
まとめ
保育園栄養士には大変な仕事がたくさんあるのは確かです。
きつい仕事も中にはあり、色々と悩む場合もありますが、経験を積むことによりしっかりと対応できるようになってきます。
献立作成や発注、栄養管理などの事務的作業を保育園栄養士が行い、厨房業務を調理師や調理パートの方が行うという保育園もあります。
個人的には、保育園栄養士も厨房業務を行い、実際に調理したり、洗浄や衛生点検などを行う事も大切だと思っています。
厨房作業を行うことで、作業動線などを考えた献立を作成することもできるようになりますし、様々なアイディアもひらめきます。
僕自身、厨房業務も事務作業もどちらも行っています。もちろん大変な事もたくさんありますが、楽しい事もたくさんあります。
保育園栄養士の仕事がきついと思った事はないですし、子供達が喜んでくれる給食やおやつを作るために、どうしたら作業しやすい環境になるのか?やどうしたら効率よくできるのか?など日々考えながら仕事をするのが楽しいですよ。
日々勉強する事がたくさんあり、自分にとってプラスになる事ばかりなのでとても楽しい職場です。
今後も、子供達が安心安全な食事ができるように取り組んでいきたいと思います。
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